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息合いと間

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 【息合いと間】
 「息合い」を考えるときに、呼吸法について解説されているのをよく見る。腹式呼吸であったり丹田呼吸であり、その違いや効能が多くの書物やサイトで説明されている。実際、私も呼吸によって血圧を整えたり、疲労を取ったりして呼吸法の恩恵に浴している。仰向けに寝て軽く眼を閉じ、両腕両足をリラックスさせながら呼吸をする。このとき、左足の裏から血管一つ一つに意識をつなげる気持ちで上げてきて、左腕、左手先に行って戻り右に移し・・・と体の中に意識をめぐらしながら呼吸を続けてゆくと疲労がとれ、頭や目がとてもすっきりする。横になるスペースがない場合は正坐や椅子に腰かけていてもいい。自立神経を調整しストレスや冷え性、動脈硬化などにも効果があるというからお勧めするが、私はこの呼吸をしていると気持ち良く眠ってしまうことがあるので、試される方はお気をつけいただきたい。また、リラックスし過ぎるとしばらく体がぼーっとしているから、足や手の指を開いたり閉じたりして体の隅々に意識を取り戻してあげなければならない。試合の前などにおこないタイミングを間違うと眠たいまま射場に出ることになりかねない。
 身体に効能のある呼吸法であるが腹式呼吸や丹田呼吸、足心呼吸などさまざまな呼吸法が紹介されているから興味のある方は是非研究してみることをお勧めする。

 
 この項で私が考えたいのは、呼吸と意識の働かせ方である。私は日本舞踊が好きでよく見るが、踊り手の鍛錬された体は意思によってコントロールされ表現される。踊り手の意識が芸に溶け込んで渾然一体となっているのがよく分る。姿形の美しさは当然ながら、踊り手の意識の静謐とした緊張とそれを楽しむ境地を見るとき、その芸のすごさに感動を得るのである。弓道も同様であろう。


 私たちは意識の働きによって体を動かす。このとき意識を整え研ぎ澄ましていくのが「息合い」なのだと思う。「息合い」は単に吸って吐いてという呼吸のリズムをつけるのではなく、呼吸の一つ一つにより体の隅々まで気を充満させていく作業である。「息合い」により体に意識が伝わりやすくなり、自然な動作につながっていくのである。
 普段私たちは呼吸をするときことさらに意識することはない。だが、弓道における呼吸は意識によって行い、これによって動作を呼び起こす。つまり、呼吸を介して意識と動作を連動させているのである。もちろん習熟すれば呼吸を意識することは少なくなるが、試合などいざというときには呼吸を意識し直すと、落ち着いて日ごろの射をすることが出来る。
 武道は心身の鍛錬によって心に感じるように体が動くことが大切であり、体が感じたことを心が受けとめることもまた大切である。心の働きによって呼吸をコントロールし意識が研ぎ澄まされていったとき、体は意識とともに無駄のない動き、隙の無い動作を得るのである。
 私たちの日常の動作というのは癖や無駄が多い。呼吸を意識のもとでコントロールする訓練をし、意識によって動作を制御する癖をつけ、無駄を排し意識と動作がすばやく連動するように訓練する。そこに心気の働きが生まれてくる。訓練の始めのうちは、意識した呼吸と動作はなかなか上手く連動せずぎこちないものである。しかし諦めず、毎日の練習で心がけていると必ず出来るようになってくる。先生や高段者の方と一緒の立ちに入り「息合い」を感じながら、映して真似るようにするといい練習になる。
 私は、大前で入場するときの「息合い」を練習で毎回意識している。入口に立ち呼吸を整え、自分の心の中から“入るぞ”という気が生まれてくるのを確認する。一歩踏み出し、体を整え礼をして・・・と入場する時に「息合い」とともに気の働きによって動作が出来ているかを確認する。心と体が一緒になり動作が出来たときはとても気持ちのいいもので、まるで踊りを踊っているような軽い動作になっている。心気の働きの神秘なるところである。


 「息合い」は「間」と密接な関係がある。たとえば人が興奮して話している場合にこちらが深い呼吸でゆっくり話をすると、相手は次第に落ち着きを取り戻すがこれは「息合い」を使った「間」のとり方である。また、仲のよい夫婦が居間でくつろいでいるときのお互いの距離は45cmぐらいがちょうど良いというが、これも「間」であり、相手の呼吸を感じられる距離なのであろう。
 弓道でも、「息合い」により射手同士の「間」を感じる。大前の先導で入場し射手同士が「息合い」を合わせるのは当然である。調和の美、協調の精神であり、射手同士が尊敬しあうことであるから、「息合い」によって「間」をはかることは弓道の真髄につながることだと思っている。大前はさらに全体特に落ちの射手に気を配り、射手同士がそろうように配慮しなければならない。もし大前が「自分は息合いで動いているから合わせてくれなければならない」などと考えているようでは情けない。大前はその立ちの先導役として射手の調和を図らなければならない。「息合い」による調和に心がけ、「間」を感じながら体配を行っていれば、落ちを感じるのは難しいことではない。眼には見えないけれど、後ろの動きは後頭部や背中で感じることが出来るし映像のように頭の中に見えるものである。「自分が何歩で此処だから、続く射手は此処だ。」などと計算で理解するのではなく、射手同士の気を伝え合い相手を知る訓練が必要であり、それが「息合い」をあわせながら「間」をはかることなのだと思う。相手を理解し協調しようとする姿勢なのだと思う。
 持ち的の練習もいいが、時には一つ的の練習をすると「息合い」と「間」の関係が良く分り楽しいから、あらたまった練習という事でなくても、時々道場の仲間で一つ的の練習をすると良いと思う。


 最近は射会や審査も参加人数が増え、進行では必ずのように間合いの説明がなされる。ある射会でゆっくりと体配を行い注意されている人たちがいた。本人達は丁寧な体配に心がけているからこれでよいと思っているのかもしれないが、全体の「間」を乱すことになり大変見苦しいものである。「息合い」による体配というのはゆっくりやることではない。射場の空間や行射の時間配分などを理解し、その場にあわせて行えないようでは体配が身についているとは言えないし、自分勝手な射ということになるから、本人も気持ちの良いものではないであろう。「息合い」による体配が大切だと思っているのだろうが、修練が出来ていいれば、「息合い」を活かしながら早い動作でも丁寧な体配が出来るものである。
 弓道における体配行射の「息合いと間」が和敬、協調の精神に欠かすことの出来ない重要なことであることを理解し、日ごろの練習を通じて私たちの身についてくるよう願っている。

 
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