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 【トレーニング】
 弓道の練習は週に何日ぐらいするのだろうか。私が20代の頃には毎日のように練習をしていた時期があり、年末に手帳を見たら363日道場に通っていたのを知って我が事ながら驚いたことがあった。さすがに現在は週3日ほどだが土日には月例会や射会などがあり、その前後は矢数をかけている。私にとっては適度な練習量である。
 大学の弓道部のように試合で中る事が必須である選手、社会人で国体選手に選ばれた方などは別としても、弓道は個人での練習が中心であるから、時間に余裕がある方はその気になれば毎日のように練習をすることが出来る。練習量は本人次第なのである。ある範士の先生が「会社勤めをしていたころに朝出社し仕事前に20射、昼休みに20射、仕事を終えてからの練習で20射と毎日60射を練習していた」と講習会で練習の大切さを説いていたが、それも志と環境があってのことだろう。以前は弓を引きたいので学校の先生になったとか公務員になったという話を聞いたことがあったが、今、教師や公務員の仕事の忙しさを思うととてもそうゆうことは言えない。
 練習量は上達の要である。だが練習量を維持するためにはスタミナと筋力が必要である。では弓道の上達のためにはどのようなトレーニングが必要なのであろうか。トレーニングについて考えてみたい。


 アスリートは不健康
 アスリートは不健康だと言ったら驚くだろうか。世界的記録を目指すスポーツ選手、トップアスリートと呼ばれる彼らは時に英雄として讃えられ、その姿には感動を覚えるし尊敬をもって競技を見る。もちろん立派な成績の蔭にはしっかりした練習の積み重ねがあるのだが、彼らの肉体は試合やレースに勝つために調整され徹底的に作られたもので一般的に言う健康な肉体というのとは違う。マラソンの選手はフルマラソンが走られるぎりぎりの肉体とスタミナのコントロールをするし、体操の選手は疲労骨折への不安を抱えながら練習し、女子の選手はホルモンバランスが崩れることに注意しなければならない。競技の日に向けて体を仕上げながら精神のバランスを保つことにも注意をはらわなければならないからメンタルトレーニングはトップアスリート必須の課題である。 
 私は健康維持のためにスポーツジムに通っている。あくまで年齢に応じた運動を心がけているが、それでも時として体を絞りすぎると疲れやすくなって昼寝が必要になったり、栄養補給に食事の回数が増えたりする。健康な体と疲れやすい体の境界は近接していて、体を維持するためには注意とメンテナンスが必要不可欠である。スポーツトレーナーなどの協力者がいなければ、普通の生活ではアスリートのようなトレーニングは困難であるし、決してアスリートが健康的とは言えないのである。
 弓道でも審査や重要な試合を目指して練習しているときには、普段以上に健康管理に気を使う。人それぞれ練習の組み立て方や本番に向けた気合の高め方など工夫があることだろう。だがそれも日常の生活を送りながらの事である。また、日常の生活とともにあってこその弓道であろうから、弓道においてはトップアスリートのような練習は弓道の本旨と違うのではないかと考えている。


 スタミナ
 弓道の練習の場合アスリートのような記録を出すための体作りというのは必要無いと考えている。もちろんトレーニングを否定しているのではない。安定した射が出来る練習量と、一日の試合と競射に耐えられるスタミナ管理、そしてメンタルトレーニングが重要と考えている。弓道では瞬発力を必要とした筋力は使わないが、体幹を鍛え維持する筋力は必要であり、集中力と緊張を自らに要求するからスタミナは重要である。体のエネルギー、スタミナというのはあるレベルを超えるとストンと切れるように無くなるから、どんなに本人が“こうしたい”と思っても一旦スタミナが切れると体は動かなくなる。集中力もスタミナの消耗とともに低下するので、気持ちと体とはかみ合わなくなり事故や怪我を起こしやすい。精神論では体は動かないのである。
 トレーニングで大切なのはスタミナ管理を知ることである。自分の体力がどのくらいあり、どれだけの練習をしたらスタミナが切れだすのか、補給のタイミングは何時か。練習や試合経験の中から自分にあった食事の時間と量を知ることが大切である。私の場合は軽い朝食を必ずとる。試合で午前中に一手引くとして午後は立ちが遅いから、たいていは一手引いたら昼食をとるようにして午後引き始めるころには消化が終わっているようにする。早弁当に見えるだろうが気にしない。少なくても立ちの1時間半前には昼食は終えているようにしている。大抵はおにぎり。米のでんぷん質は消化吸収が早いから胃腸に負担をかけない。お餅はさらに良く、まさか控え室でお餅を焼くわけにはいかないが脳の働きを助ける糖分が摂れるからお汁粉などは理想的である。ちなみにお餅100gあたり235kcal、ご飯100gは168kcal。チョコレートやお団子などの御菓子も効果的である。


 筋肉トレーニング
 筋肉トレーニングは必要かと聞かれたら、私はほどほどにと答える。筋肉は体を支える大切なもので年齢とともに落ちやすくなるから、普段から筋肉を刺激し鍛えるのは良いことだし、筋肉トレーニングをしていると怪我や事故の予防に役立つ。腹直筋や広背筋、上腕三頭筋や三角筋、大臀筋などは弓道に関係する筋肉である。しかし弓道で筋力をトレーニングするのは体幹を支え筋バランスを良くする為で、腕や肩の筋肉を鍛えたから弓が引きやすくなったり、強い弓が引けるかといったらそうではない。肩関節のインナーマッスルを鍛えるのもよいし、骨盤から脊椎につながる脊椎起立筋を鍛え、胴造りの安定を図るのも弓を引くには効果的である。骨法をいうまでもなく、筋力で弓を引こうとすると筋肉を傷め結果として弱いところを庇ってバランスを崩し射が変わってくる。高段者の方でも年齢とともに筋肉の疲労はとれにくくなる。練習量を維持したいという気持ちはあるだろうが、無理をすると弊害が出てくる。休むことも練習だと心得ることが肝心であろう。
 日常的に軽い筋肉トレーニングをするのは良いが、試合前の筋肉トレーニングはいけない。筋肉は細胞が破壊されて回復するときに増強されてゆく。普段の練習で作ってきた筋肉もトレーニングで壊され、増強の際には硬い筋肉になってしまう。結果伸合いが狂う。特に三角筋や上腕筋のトレーニングは控え、どうしてもやりたい場合は腹直筋や広背筋、大腿四頭筋などの筋肉トレーニングをするのが良い。
 私も利用しているが、スポーツジムにあるマシーンによる筋肉トレーニングは注意が必要である。マシーンで負荷をかけながらトレーニングをしているとついつい強い負荷をかけたくなる。負荷を強弱織り交ぜながらトレーニングをする場合もあるので強い負荷を否定はしないが、往々にして間違った筋肉を使ってしまうケースもあり、ジムでトレーニングをされる方はスタッフに時々見てもらい、フォームチェックをしてもらう事が必要である。慣れてきたらマシーントレーニングよりも自分の体重を使った筋肉トレーニングをするようお勧めする。
 筋肉トレーニングをした後はきちんとアイシングをして熱を冷ますことも大事である。疲労物質が溜まると故障の原因になる。
 よく誤解するのにストレッチやマッサージがある。筋肉トレーニングの後のストレッチやマッサージは硬くなった筋肉を柔らかくするのに効果があり筋肉も伸びやすくなる。しかしこれも程度の問題で、やりすぎたストレッチは筋肉に疲労を与える。間違ったストレッチをすると筋肉を痛めるから、やはりスポーツジムなどのプログラムに参加して憶えるのが良いと思う。マッサージも刺激の伝わり方が変わり、弓を引くときの筋肉の働きや感覚が変わってしまう。私は試合の3日前ぐらいからは強いストレッチや全身のマッサージはしないようにしている。


 メンタルトレーニング
 弓道は心と技とのバランスが大切だと考えている。アスリートのメンタルバランスにも通じることであるが、弓道では心気の働きによって体が動き射が活きてくるのであるから、心を知る深い洞察が必要であると考えている。自分の心の中を読み、整え、心を働かせるトレーニングが必要である。
 弓道におけるメンタルトレーニングについてはページを新たにして考えてみたい。


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